個人事業の法人成り – 税務上検討すべき論点のまとめ

はじめに

個人事業主から法人になる場合(法人成り)に検討すべき税務上の論点を整理する。

論点

  • 事業の引継ぎ方法
  • 事業の時価
  • 事業の譲渡に伴う消費税
  • 個人事業の廃業

事業の引継ぎ方法

まず個人事業主とて保有していた事業(資産・負債)をどのように法人に引き継ぐか?

選択肢としては、以下の4つが考えられる。

  • 現物出資
  • 譲渡(★)
  • 贈与
  • 賃貸

実務上は「譲渡」の形式を取るのが一般的。これは、手続き的にシンプルで、かつ、時価で引き継げば個人・法人双方において余分な課税所得が発生しないことが理由。

土地・建物などの登記済みの固定資産がある場合、譲渡するのが手続き的に面倒なので「賃貸」の形式が取られたりする。

事業の時価

次に事業を譲渡する場合、その譲渡価額はいくらにするべきか?

前述の通り、「時価」で譲渡するのが税務上最も望ましい。各資産ごとの「時価」は以下の通り。

棚卸資産

通常は販売価額が時価となるが、販売価額の70%以上で譲渡した場合、その価額を時価とみなしてもらえる。

法第40条第1項第2号に規定する「実質的に贈与をしたと認められる金額」とは、同項に規定する棚卸資産の39-1に定める価額とその譲渡の対価の額との差額に相当する金額をいうのであるが、当該棚卸資産の39-1に定める価額のおおむね70%に相当する金額からその対価の額を控除した金額として差し支えない。(所得税通達40-3)

時価のある資産

土地、建物など時価がある資産はその価額。

それ以外

債権債務や償却資産は、時価を算定するのが困難なので、実務上「時価=簿価(適正な帳簿価額)」として取り扱われる。

事業の譲渡に伴う消費税

個人事業主が消費税納税義務者の場合、この譲渡取引は消費税の課税対象となる。そのため、新設法人側でも2年間免税事業者メリットを享受しない場合(還付申告がある場合など)は、当譲渡取引は課税仕入れとなる。

個人事業の廃業

法人成りによって個人事業を廃止する場合は以下の書類の提出が必要。

  • 個人事業の開業・廃業等届出書(事由発生後1月以内)
  • 所得税の青色申告の取りやめ届出書(対象年の翌年3月15日まで)
  • 給与支払事務所等の廃止届出書(従業員や事業専従者に給与を払っていた場合、事由発生後1月以内)
  • 事業廃止届出書(消費税、事由発生後速やかに)
  • 所得税の予定納税の7月(11月)減額申請書(同月15日まで)

留意事項

  • 個人事業を廃業しても翌年3月15日までに、法人成りするまでの事業所得と、法人成り後の給与所得を合わせて確定申告する
  • 事業廃止年は事業税の「見込額」を必要経費に算入できる
  • 青色申告特別控除は月割りがないので全額控除可能(65万円 or 10万円)

所感

可能な限り、資産・負債が少なくなってるタイミングで事業の引き継ぎができるとシンプルで嬉しい。あと、法人成りの前に在庫棚卸もしておかなくては。個人事業税を必要経費にできる点もお忘れなく。

Sources

兵庫県西宮市生まれのフリーランスRailsエンジニア。海外を拠点にデジタルノマド生活中。/ 前職・資格:公認会計士 / プログラミング言語:Ruby, JavaScript, HTML, CSS / 日本語・英語
コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です